パソコンの選び方(上級)
2024.5.24
2024.5.24
この記事では電電3年の筆者がパソコンの性能について詳しく知りたい人に向けて解説をしたものです。パソコンわからないよ~という人は初級編を御覧ください。
大学生が大学で使うノートパソコンを選ぶ場合を想定しています。
筆者おすすめスペック
これは埼大が推奨しているスペックより一回り高いので注意してください。このスペックならパソコンをハードに使う人でも,4年後でも活躍できるというスペックです。
性能 | |
画面 | 解像度FHD(1920×1080),大きさ13.3型 |
バッテリー | 10時間以上,USB PD対応 |
CPU | Intel Core i5(第12世代)以上または AMD Ryzen 5(第 5世代)以上 |
メモリ | 16GB |
ストレージ | SSD 256 GBできれば512 GB |
インタフェース | USB 3.0 Type A ×1ポート以上,HDMI |
ソフトウェア | MS Officeの購入は不要 |
その他のおすすめ | USBメモリ,マウス,外付けキーボード,外付けディスプレイ |
画面
結論
FHDの13.3型がおすすめです。
解像度とは画面を構成する点の数を示し,この数字が大きいほど画面が精細に表示できます。例えば解像度1280 × 768なら横1280縦768個の点が格子状に並んでいることになります。この点の数は無造作に決まっているのではなく,メーカーに関わらずよく使われている大きさがあり,それぞれ名前がついています。
・HD(エイチディー):1280 × 768
今どきのPCとしては明らかに小さすぎます。特にスマホに慣れた世代にとっては違和感しかないのでやめておきましょう。古いPCとか激安品にあります。
・FHD(フルエイチディー):1920 × 1080
普通のノートパソコンの画面サイズに対してはこれくらいが普通になっています。
・4k(よんけー):3840×2160
4kはちょうどFHDを上下左右に4つ並べた大きさです。FHDでも少し拡大して使うのでノートPCの大きさで4kは過剰かなという感じがします。補足で述べる「外付けディスプレイ」のような大きい画面では性能を発揮します。
次に画面の大きさについてです。画面の大きさは12.1型,13.3型,15.6型がノートPCでよくあるサイズです。この型というのは画面の対角の長さをインチで表したものです。つまり,一インチはだいたい2.5 cmなので12.1型であれば画面の左下から右上までの長さが12.1×2.5でだいたい30 cmくらいあることになります。大きさは個人の好みになるのですが,だいたいの感覚は以下のようになります。
・12インチ
B5相当のサイズです。軽くて持ち運びやすいモデルに多く採用されています。しかし,調べ物をしつつレポートを書く作業をするとき,左右に画面を分割するには小さすぎる印象です。
・13インチ
A4相当のサイズです。多くのノートPCが採用する大きさです。決して大きいとは言えませんが持ち運ぶことを考えるとこのくらいがバランスが取れていると思います。
・15インチ
据え置き型(家でだけ使う)のノートPCやゲーミングPCに多いサイズです。持ち運べないわけではありませんが,このサイズのものは大抵重いので特に目的がなければ避けることをおすすめします。(軽いモデルももちろんあります。)大きい画面が使いたければ外付けディスプレイを使用することをおすすめします。
補足
・有機EL(別名OLED)にすべきか?
近年,液晶ディスプレイに変わって有機ELのディスプレイがノートPCにも搭載されるようになりました。有機ELには見やすい,きれい,薄いなどの特徴があり,iPhone 12以降のiPhoneやAndroidに採用されています。有機ELはおおよそ液晶ディスプレイよりも優れていますが,それは主に綺麗さや薄さといった大学生の一般的なレポートにはあまり関係のない性能であり,液晶ディスプレイでも問題はありません。また,液晶ディスプレイでも様々な性能のものがあります。事実,画面の綺麗さに定評のあるMacは液晶ディスプレイを採用しています。
・きれいな画面とは
ディスプレイの性能を表す指標として「色域,リフレッシュレート,応答速度,PPL」があります。気になる方は検索してみてください。
バッテリー
結論
多くのWindows PCでは実際の動作時間はスペックシートに書いてある動作時間の半分なので気をつけましょう。また,極端に軽いPCの場合バッテリー容量が削られていることがあるので注意しましよう。実容量で50Whくらいあれば普通の範囲だといえます。
バッテリーで重要なことは「実際に使える時間は製品に書いてある動作時間の半分くらいしかない」ということです。パソコンのスペックシートに記載される動作時間の根拠となっている「JEITAバッテリ動作時間測定法」というのはWi-Fiをオフにしてひたすら動画を流すか何もしない状態での計測なので,アプリを起動したり,人間が操作し続ける場合の測定とはかけ離れてしまっているのが現状です。
また,極端に軽いPCの場合バッテリー容量が削られていることがあるので注意しましよう。軽いモデルを選ぶ時は気をつけましょう。具体的には1 kg程度または実容量で50 Whくらいあればバッテリーを無理に削っていない普通の範囲だといえます。
ただし,2023年に出てきたJEITA 3.0の計測方法では実際の使用に近い環境での測定結果を示す(4k60fps動画再生)ことになったので,ある程度信頼できるでしょう。
JEITA 3.0の参考
加えて,バッテリーの充電方法としてUSB PDに対応しているものを買うと色々と便利です。最近まで,ノートパソコンの充電には各社がバラバラの形状,バラバラの電圧の充電器を用意していて,充電するためにはそのパソコンの充電器を使用する必要がありました。しかし,USB PD(USB Power Delivery)の登場によって各社共通の充電器やモバイルバッテリーを使用することができるようになりました。USB PDは本来データ通信のためのUSB Type Cのコネクタに大電力を流せるようにしたものです。
しかし,USB PDは広範なデバイスに対応するためにかなりややこしい仕様になっています。以下に注意すべきポイントを挙げます。
・出力と入力ができる電力に段階があり,それに満たない出力の充電器では充電できない。
主要な段階として15W,30W,45W,65Wがあり,ノートパソコンが何ワットからの充電に対応しているのか調べる必要があります。例えば45Wを要求するノートパソコンに対して最大30Wしか出力できない充電器で充電することはできません(一切反応しません)。ただし,下位互換があるので逆はできます。30Wを要求するノートパソコンに対しては最大45Wの充電器は自動的に30Wの出力をするため,ノートパソコンが壊れることはありません。同様に,USB PDは普通のUSBの電源としても使えます。例えば,65Wの充電器は5Wにしか対応していない普通のスマホにも安全に充電できます。これはUSBがデータを通信できるという特性を活かして充電器とデバイス側で通信して合意(ネゴシエーション)を行っているためです。
・Type CがついているからといってPD対応ではない
Type Cポートがついていたとしても,基本は通信用だと思いましょう。
・USB PD対応と書かれていても「充電」できるとは限らない
ノートパソコンがスマホとかに対して電力を出す側としてのPDの可能性があり,ノートパソコン本体に充電する目的には使えない可能性があります。
・USB PD対応のケーブルを使わないといけない
PDでは大電力を流すのですから,通信用の細いケーブルでは危険なため,非対応のケーブルでは普通のUSBとして動作するようになっています。ケーブルにも電力の段階がありどこまで(例えば15W,30W,45W,65Wなど)の対応か決まっています。
補足
・バッテリー持ちが良いモデル
Apple MシリーズのCPUを搭載した Macはとてもバッテリー持ちが良いです。ただし,Macは大学で推奨されていないので必要なソフトウェアを動かせることを確認しましょう。Macの人は何人か知っていますが,ある程度の知識がある人たちでした。
・バッテリー持ちが悪いモデル
個別GPUを搭載したゲーミングPC,HシリーズのCPUを搭載したモデルは高性能の代償に消費電力が高く,バッテリー持ちは悪いです。
CPU
結論
Intelなら12世代以降,AMDなら5000番台以降のi5グレードを買いましょう。具体的にはCore 5 120U, Core i5 1340P, Core i5 1240P, Core i5 1355U, Core i5 1255U, Ryzen 5 7540U, Ryzen 5 7530U, Ryzen 5 5625U, Ryzen 5 5500Uなどがあります。
CPU(Central Processing Unit)はプログラムを処理するPCのエンジンにあたる部品です。作業する人の数と手際の良さとも言えるでしょう。Mac以外のPCを買うとき基本的にはIntelかAMDのどちらかのメーカーのCPUが入っています。どちらのメーカーでも性能ごとにいくつかの段階に分かれた名前がつけられています。
Intel | AMD | 特徴 |
Celeron, Pentium, Intel N | Athlon | 廉価版。消費電力は低いが性能もかなり低い |
Core i3, Core 3 | Ryzen 3 | 廉価版。intelで12世代以降ならあり |
Core i5, Core 5, Core Ultra 5 | Ryzen 5 | バランスの良い売れ筋モデル |
Core i7, Core 7, Core Ultra 7 | Ryzen 7 | 最近のノートPC向けではi5とあまり変わらないことが多い |
Core i9, Core Ultra 9 | Ryzen 9 | 高性能モデル |
基本的には上の表でcore i5相当のランクのものを買うことをおすすめしますが「世代」と「末尾型番」に注意する必要があります。
①世代
世代とは端的に言えば作られた年のことを指します。新しいほど性能は高く,性能に対するコスパも良くなります。世代が違えば,ブランド名同士の比較はできなくなります。例えば,筆者が使っているCore i7 8565uよりも12世代のCore i3 1310uの方が1.5倍以上も性能が良いです。同じi7で比べるとさらに差は開きます。したがって,Core i7だから高性能だろうといって買うのはやめましょう。今から買うならIntelなら12世代以降,AMDなら5000番台以降を買いましょう。
②末尾型番
CPUはランクを表すブランド名の他に,低消費電力向け,高性能向けなど目的ごとにシリーズがあり,型番の末尾にあるアルファベットで区別できます。
Uシリーズ(おすすめ)
Uシリーズはノートパソコン向けのCPUとして一般的なものです。おすすめです。
Pシリーズ(おすすめ)
Intelのみ見られる型番で12世代と13世代で使われています。Uシリーズよりもやや消費電力が高く高性能です。おすすめです。
G5, G7シリーズ
Intelの11世代に見られる型番で,数字は内蔵GPUの性能を表していますが,11世代と12世代では性能がかなり違うので12世代以降を買うようにしましょう。
Hシリーズ
高性能を指向したCPUですが,その分パソコン本体の重量は増し,バッテリー持ちも悪くなります。大学で持ち運んで使うのにはおすすめしません。使えないことはありませんがCGをしたいとかゲームをしたいとかの別な目的がある人だけにするべきでしょう(僕はそのような用途にはデスクトップPCを推奨します)
以上の条件を満たすCPUでよく売られているものにはCore 5 120U, Core i5 1340P, Core i5 1240P, Core i5 1355U, Core i5 1255U, Ryzen 5 7540U, Ryzen 5 7530U, Ryzen 5 5625U, Ryzen 5 5500Uなどがあります。
CPUの性能を一覧できるPC自由帳というサイトがあります。参考にしてみてください。
PC自由帳
補足
・デスクトップ向けとノート向け
パソコンには持ち運びできない箱型のデスクトップパソコンと持ち運びできるノートパソコンがあります。デスクトップとノートパソコンではCPUに求められる特性が異なるため一般的には異なるCPUが使われます。本記事ではノート用CPUについて解説しており,デスクトップ用CPUとは異なるため注意が必要です。デスクトップ用CPUは消費電力が高い代わりにノート用CPUよりも性能が高いです。そのため,ゲームやCG,動画編集など処理能力が必要な用途に適しています。したがって,性能を求めて性能の高い(目安:30万以上の)高性能ノートPCを買うよりもデスクトップを別で購入した方が適している可能性があります。
・性能は何で決まるのか
CPUの性能は「世代」「コア数」「クロック数」によって決まります。世代は解説した通りCPUが作られた年代のことで,使われる製造技術の違いや設計の違いによって下地となる性能が決まります。次に,コア数とはCPUの内部で作業をする人の数に相当する概念です。コア数が多いほど性能は高くなります。近年では6コアから12コア程度のCPUが一般的です。最後にクロック数ですがこれは作業する人の速さに相当します。クロック数は近年のPC用CPUではGHz(ギガヘルツ)の単位で表され数字が高いほど性能が高いです。しかし,近年では性能と消費電力の最適化のために異なる特性を持ったCPUコアを組み合わせることが行われており,単純にこれらの数値で性能を推測することは困難になっています。実際の性能を知るためには上で挙げたようなベンチマーク(性能テスト)の結果を見れるサイトを活用しましょう。
・GPU
ノートパソコンを選んでいるとGPUという項目を目にするかもしれません。GPU(Graphic Processing Unit)とはその名の通り画面表示に関わる部品です。GPUにはその組み込まれ方に2通りの方法が存在し「内臓GPU」と「外付けGPU」などと呼ばれています。内蔵GPUはCPUに内蔵されているGPUのことで,画面のついている全てのパソコンに存在する基本的なGPUです。外付けGPUは主にゲームやCG,動画編集のためにさらなる性能を求める場合に搭載されます。近年ではノートPCに搭載される内蔵GPUの性能はかなり上がっており特段重いゲームでなければ普通に動いてしまうため,外付けGPUのあるノートPCを選択する必要性は減っています。むしろ,外付けGPUは一般にバッテリー持ちを悪くするためデスクワーク目的ならばない方がよいです。もし,ゲームやCG,動画編集を一般的なノートPCでできないくらい高度に行いたい場合は高性能ノートPCではなく,デスクトップPCを購入することをおすすめします。
メモリ
結論
理系は16GB,文系なら8GBでも一応は大丈夫でしょう。
メモリ(RAM)は作業をする人の机の広さに相当する概念です。画像を保存するようなストレージとは異なる概念なので注意しましよう。メモリは8GB,16GB,32GBの量を搭載したPCが広く流通しています。メモリはどのように選べばよいのでしょうか。メモリとはパソコンの動作を遅くしない程度の量を選択するべきです。作業する机(メモリ)が広ければ広いほど作業が高速になるわけではありませんが,狭すぎる机では作業する人(CPU)の能力を活かしきれません。以下にそれぞれの容量に対する所感を述べます。
・8GB以下
メモリ4GBの製品は激安価格帯にまだ存在しますが大学生が普段使いするには適していません。「大容量!快適」などと書いてあることがありますが10年前の基準であり,はっきり言って詐欺です。
・8GB
今から買うならここが最低ラインです。十分ではありませんが最低限動きます。
・16GB
いくらか余裕のある構成です。大学卒業まで十分活躍できるでしょう。Core i5をCore i7にするよりもメモリ16GBにする方が弱点が少なくなるためおすすめです。
・32GB
普通の大学生は16GBでも十分おつりが来るので,32GBは過剰です。高解像度の動画編集,Unityなどのゲーム開発,Dockerや仮想マシンを使ったプログラミングなどのメモリを必要とするクリエイティブタスクをする場合には有用です。
・32GB以上
メモリ64GBや128GBはロマンです。
基本的に16GB,予算がないなら8GBにしましょう。
ストレージ
結論
256GBか512GBのSSDを買いましょう。
ストレージは画像などのデータを保存するための部品です。ストレージの項目で最も重要なことはHDDを買わないことです。HDDのパソコンは今どきあまりないですが,HDDを選ぶと他のスペックをいくら盛り盛りにしても全てを無に帰すほどの遅さになります。ストレージの容量は128GB,256GB,512GBが一般的です。ストレージはスマホの場合と同じように考えればよいですが,パソコンには色々なデータを入れる可能性があるので多めにしましょう。しかし,大学がライセンスを配布しているOne Driveを使ったり,ほとんど使わないデータは外付けストレージに移すことができるので過度に心配する必要はありません。
インタフェース
結論
HDMIとUSB Type Aが一つ以上欲しいです。Type Cしかない場合はハブを買いましょう。
HDMIコネクタがPCに直接備わっているものがおすすめです。大学推奨スペックには書いていない学部もありますが,プレゼン等で使う機会は多くあるでしょう。もし,気に入ったモデルにHDMIがついていなかった場合はUSB CからHDMIに変換するコネクタを買うことでも対応できますが,荷物が増えて手間です。
ソフトウェア
MS Office は入学後に大学が無料でライセンスを配ってくれるので不要です。元から入ってるPCが売られていたりしますがそういうのはMS Officeの価格がPCの本体価格に上乗せされているのでコスパを求めるなら避けたほうが良いでしょう。
その他のおすすめ
まず,誰にとってもUSBメモリがあるとよいでしょう。クラウドストレージが発達した今日ではあまり使われませんがファイルを受け渡したり,大学の計測機器に差し込んでデータを取るなどの場面で使われます。Type Aのもので8GB以上の製品を探しましょう。USB 3.0対応のものだと転送速度が速くて良いです。
また,マウスを買うことをおすすめします。タッチパッドではどうしても作業効率が落ちます。大学の課題がパソコン上での作業であることが多くなった今日ではPCの作業効率は大学生のQOLに大きく関わるでしょう。
さらに,デジタルライフを快適に過ごしたい方には,外付けディスプレイと外付けディスプレイキーボード,マウスの3点を追加で購入することを強く勧めます。なぜなら,調べ物やレポート作成などの効率はパソコンの性能よりも「人間の作業速度」つまり「見やすさ」や「操作しやすさ」によって決まるものであり,パソコン自体の性能を1ランク落としてでもその資金で「見やすさ」や「操作しやすさ」といった人間の作業性を上げる機器に投資した方が良いからです。24インチのFHDディスプレイとキーボード,マウスは全部で一万五千円から買うことができます。